読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

不動産物語

不動産売却について詳しく解説

【不動産売却】不動産の価格は「一物多価」

不動産売買の基本




スポンサーリンク


ここで改めて、不動産の価格とは何かという点について考えてみましょう。

 

一般的に市場で売買されているもののなかで、これほど分かりにくいものは、ほかにはないと思います。その価格が「一物一価」ではないからです。

 

不動産市場は基本的には中古市場と考えられます。新しく整備された分譲宅地や新築の分譲マンションや建売住宅もあるとはいえ、中古住宅はもちろん、非住宅用途のビルで売買市場に供給されるものの多くは中古です。

 

土地にしても、埋め立て地や新しく山林を開いた土地などを除けば、やはり多くは中古です。世の中、中古売買は少なくありません。

 

車もあれば、家具や家電もあります。古本や古着も暮らしのなかでよく利用されています。これら中古市場でよく売買されるものと不動産が大きく異なるのは、不動産だけはもともとの所有者が売りに出すという点です。

 

車も家具・家電も書籍も衣類も、売り手からいったんプロの流通会社が買い取って、それをエンドユーザー向けに売りに出す、というスタイルが一般的です。フリーマーケットやネットを利用した中古売買ではもともとの持ち主が直接買い手を見つけて売買を成立させますが、プロの流通会社を間に挟む方がまだ一般的でしょう。

 

実はここに、不動産の価格の分かりにくさの一端が隠れています。それは、売り手側の事情が価格に反映されやすい、という点です。

 

不動産を売却しようとする人は当然それなりの理由があって売却に踏み切るわけです。資金需要があってその調達のために売却する場合もあるでしょうし、その土地を所有し続ける必要性を感じられないため売却する場合もあるでしょう。

 

その理由の差が、買い手との間で手を打つ最終的な価格の差をもたらします。購入検討者から価格引き下げの要求を受けた場合、事情があって一刻も早く不動産を現金化したいという売り手であれば、その価格引き下げ要求を容易に受け入れて、少しでも早く換金しようとするでしょう。

 

それで取引が成立すれば、成約価格は売り出し価格に比べると当然、低くなります。売り手が売らざるを得ない状況に立たされている場合ほど、買い手は価格交渉を優位に進められます。

 

その結果、安く買い叩かれてしまう例は、決して少なくありません。これに対して中古の車や家具・家電などのように、売り手がプロであればどうでしょうか。プロが売却する理由は明快です。

 

それが、商売だからです。資金調達のために売却するわけでも、所有し続ける必要性を感じられないため売却するわけでもありません。あくまで商品として売却し、それによって収益を上げる。

 

それが目的です。価格引き下げ交渉には一切応じないとは言いませんが、商売として売却する以上、限度はあります。売却するという行為に対する構え方が、個人とは大きく異なるわけです。

 

不動産はこのように、中古のものを所有者自ら売りに出します。そのため、所有者である売り手側の事情が、価格形成を左右します。

 

たとえ同じ不動産であっても、売り手が異なればそれを売りに出す事情も異なるため、売却希望価格にも取引成立に至る価格にも差が生じます。「一物多価」である理由の一つが、ここにあります。

 

不動産の価値をどう評価するかという点も、同じです。誰が評価するかによって違いがあるため、同じ不動産でも一律に評価されるとは限りません。不動産の公的な評価制度を見ても、それは明らかです。

 

不動産の公的な評価制度には、大きく3つの仕組みがあります。一つは、国土交通省が毎年定期的に公表する「公示地価」や「都道府県地価調査」です。

 

とりわけ地価公示はその時期になるとメディアでも大々的に報道されるので、不動産に関心を持つ人にはなじみ深いかと思います。

 

公示地価は国全体として、地価調査は都道府県単位で実施するという違いはあるものの、法律に基づき一定の時期に具体の調査地点の価値を評価する、という基本は共通です。

 

ともに不動産取引の指標という位置付けです。残る二つはともに、資産課税を前提にした評価です。一つは「固定資産税評価額」、もう一つは「相続税路線価」です。

 

不動産を所有していると、これらは報道で見聞きするのと違って、もっと身近で切実な存在かもしれません。説明するまでもないでしょうが、土地に対する固定資産税額を決めるために用いるのが固定資産税評価額、土地の相続資産としての評価額を求めるために用いるのが相続税路線価です。

 

固定資産税評価額を除き、公的な評価制度では個別の不動産全ての評価をそのまま示しているわけではありません。

 

公示地価や地価調査では調査地点の評価額は算定されますが、その周辺に位置する土地の評価額はそこから類推するしかありません。

 

相続税路線価は文字通り「路線価」、つまり道路ごとに評価された額ですから、その道路に面する土地の評価額はそこから一定の考え方に基づき算出することになります。

 

いずれにしても、同じ土地に関してこれら3つの評価額が一致することは、まずありません。不動産がかねて「一物多価」であるといわれるのは、そうした実情からです。これもまた、不動産価格の分かりにくさを助長しています。

 

もちろん、「一物多価」であることをとがめているわけではありません。不動産の公的な評価という点では共通でも、その目的は異なります。

 

評価の目的が異なる以上、評価の視点も異なります。評価結果が異なるのは無理もありません。つまり不動産の価値は、それを評価する主体の狙いによって異なって当然ということです。

 

不動産の売買という場面でいえば、買い手にとっての適正な価格は購入検討者によって異なるわけです。同じ土地に対して、1億円が適正であると見る主体もあれば、1憶5000万円が適正であると見る主体もあっておかしくありません。

 

先ほどは、売り手側の事情が不動産の価格形成を左右する、と説明しました。同様に、買い手側の事情も、不動産の価格形成を左右するわけです。

 

こうなると、一つの不動産でも売り手と買い手の組み合わせによって無数の価格が存在しそうです。もちろんそうはいっても、不動産には相場というものがありますから、一定の価格帯には納まります。

 

その一定の価格帯の中でも、互いの組み合わせによって売買成立に至る価格は異なってくるわけです。そうした状況で売り手として考えるべきことは、ただ一つです。

 

その一定の価格帯の中で最も高い価格での売却を目指すということにほかなりません。不動産は「一物多価」であるという前提に立って、「多価」のうちの最高価格を狙うべきなのです。

広告を非表示にする