不動産物語

不動産売却について詳しく解説

【不動産売却】隣地を取り込むことで不動産の価値を引き上げる前面道路との関係とは?





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測量で面積を実測する作業などを通して土地の周囲の状況を確認していくと、予想外の事態に出くわすことがあり、埼玉県草加市内の土地では公道との間に第三者の土地が薄く挟まれていることが分かりました。

 

それが原因で、普通なら3000万円の価値があるとみられる土地が、800万円でしか取引されなかったのです。その価値を本来の3000万円まで引き上げることはできないのでしょうか。この土地は一切利用できないのかといえば、そうではありません。土地に建物を建てようとするとき、法律上は道路に面していることが求められます。

 

ただ、これは建築基準法という法律上の「道路」であって、公道に限りません。いわゆる私道も含まれます。この例の場合も、公道との間に挟まれていた第三者の土地が「私道」扱いになれば、公道と一体になって、この土地が面する道路を構成しているということになります。

 

第三者の土地はこれまでも公道と一体になって事実上道路として利用されてきただけに、この点は問題ないでしょう。

 

建築基準法上の手続きは問題なく進み、建物を建てるということで土地を利用することは可能です。道路に面していない土地とは扱いが異なります。しかし、それでも不動産の価値が大幅に抑え込まれるのは、第一章で説明したように金融機関から融資を受けられないからです。

 

一般的な住宅地では、それは致命傷です。住宅ローンを組めない土地では、買い手が見つかるか、危ぶまれます。3000万円の価値が800万円まで減じられているのは、そのためです。

 

この不動産で価値の損なわれた分を取り戻す方法が、一つあります。それは、この第三者の土地を買い取ること。

 

自身の所有地に組み込んでしまえば、公道に直接面するようになるので、ごく普通の土地として扱われます。建物を建てることはもちろん、土地・建物の売買で買い手は金融機関から融資を受けることができるようになるはずです。

 

簡単そうなことではあります。それを所有する第三者にとってみれば、公道と同様に事実上道路として使われている土地。

 

その規模や形状から見て、何かに利用できるようなものではありません。売ってほしいと言えば、容易に話に乗ってきそうです。

 

ところが、世の中、そう簡単には物事を進められません。この埼玉県草加市内の例では、そもそも売ってほしいという話を持ち掛ける相手がいないことが明らかになったのです。

 

時間を掛けてようやく探し出した土地の所有者はすでに亡くなっていました。相続人は相続を放棄するといいます。この土地を担保に借金していたようで、抵当権と呼ばれる権利も登記されていましたが、金銭の貸し手である債権者の会社はいまではもう清算会社。債権・債務関係を整理し、すでに消滅していました。

 

交渉相手がいれば、価格交渉はあるものの話はまだ簡単です。なかにはこのように、誰と交渉すればいいのかはっきりしないという例もあるのです。

 

時間と費用をかければ、やりようはあります。裁判所に申し立て特別代理人という立場の人を選任してもらい、土地の売却処分に関する権限をその特別代理人に行使してもらえばいいのです。

 

つまり、売ってほしいという話をこの特別代理人に持ち掛けるわけです。ただ、誰でも特別代理人として選任してもらえるわけではないので、その手続きもそう簡単なものではなさそうです。

 

いずれにしても、問題の第三者の土地に関して決着をつけるには、2、3年はかかると踏んでいます。ただ決着さえつけば、800万円の土地は3000万円まで価値を高めることができます。法律上の手続きを進める一方で、現地はしばらくコインパーキングとして有効活用を図っていこうと考えています