不動産物語

不動産売却について詳しく解説

不動産売却交渉術!足元を見られないための解消方法





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私が購入を持ちかけられる不動産は、以前からほかの第三者と売買に向けた交渉に入っていて、そこで足元を見られてしまっているものが少なくありません。

 

不動産の抱える減価要因を指摘され、価格を抑えられてしまっているのです。逆にいえば、そうしたマイナス要素を抱えている不動産がそれだけ多いということです。第一章と第二章で説明してきたことを踏まえた上で、このマイナス要素とはどういうものなのか、改めて整理しておきましょう。

 

まず土地そのものに関して。土壌が汚染されていないか、地盤の強さに問題はないか、という問題ももちろんあります。ただ都市部の市街地内では、土地の価値はやはりその土地をどこまで有効利用できるかという視点で判断されるのが一般的です。

 

つまり、そこにはどの程度の床面積を持つ建物を建てられるか、という視点です。この床面積は、敷地の面積とそこに適用される容積率で決まります。

 

測量が土地の面積を確定させるのに欠かせない作業であること、敷地に適用される容積率がその敷地の条件によってさまざまに変わり得ること、これらはこれまでも説明してきた通りです。

 

だからこそ、測量図がなかったり隣地境界が定まっていなかったりするということは土地の面積が確定できていないという点で、適用される容積率が建築規制上のルールによって抑えられるということは床面積を十分に確保できないという点で、それぞれマイナス要素として認識されてしまうわけです。

 

次に建物に関して。これはもう、法律に基づいて建設されているか否か、この点に尽きます。床面積を多く確保するのが収益性の観点からは重要とはいえ、建築規制上のルールに違反して床面積を稼いでいるような建物は価値を見込めません。

 

建物完成時に受けるべき完了検査の検査済証の有無が問われるのも、同様の視点からです。ただこの視点はどちらかというと、金融機関の視点です。つまり、その不動産の購入資金を融通できるか否かという見方です。

 

不動産を担保に資金を調達する必要がない買い手は一部に限られてしまいますから、少なくとも売却のしづらさにつながることは間違いありません。もちろん、具体的な不動産売買で買い手にその購入資金を融通するか否かは、金融機関によって判断が異なります。

 

このほか、土地・建物に共通していえるのは、権利を自由に行使できない状態が挙げられます。土地でいえば底地権を持つ地主と借地権者の関係、建物でいえばオーナーとテナントの関係、それらの存在がマイナス要素として認識されます。

 

例えば、築年数が経過し老朽化したビルにテナントがごく一部残っている場合、いくらテナントビルで賃料収入が得られるとはいえ、よほど立地条件に恵まれているならともかく、それを収益ビルとして購入する買い手はまず見込めません。

 

テナントビルを取り壊し、更地にした上で、別の利用を図るはずです。そこで問題になるのがテナントの存在であることは、立ち退きの必要性が生じるからです。テナントに立ち退き料を支払わなければならない上に、立ち退き交渉を誰に依頼するかという課題も発生します。

 

しかもその立ち退き交渉がすぐに済むのか否かは相手次第ですから、先行きの見通しを極めて立てにくいのが現実です。テナントの立ち退きが済むまでに費用や時間がどの程度掛かるのか、なかなか見通せないというのは、買い手にとっては事業上のリスクです。

 

そのため、テナントが残っているという状況は大きなマイナス要素になってしまうわけです。所有する不動産がどのようなマイナス要素を抱えているのかは、先ほどその必要を指摘した不動産の現状把握で分かります。

 

そこで明らかになったマイナス要素は、できるだけ早いうちに解消を図っておけば、その不動産を売却する時点になってもそれが理由で価格が抑えられてしまうという事態を避けることができます。

 

不動産を売却する時点でマイナス要素を把握できれば、その段階で対処するからそれでいい、と対応を先送りするのは、得策ではありません。

 

高値売却という目標は一朝一夕に実現できるものではないからです。そこに至るまでの戦略がモノをいいます。

 

例えば立ち退きの問題に事前に備えるには、立ち退きを求めるのに相応の理由と費用を必要とする普通借家から、賃貸借期間を具体的に定めてその期間終了と同時に立ち退きを求められる定期借家へ、建物賃貸借契約を切り替えておくのがいい、と第二章キホン12では提案しました。

 

問題は、それを具体的にどうやるかです。すぐにでも不動産を売却しようとするのではなければ、テナントが入れ替わるタイミングをとらえて新しく入居するテナントとの間で定期借家での建物賃貸借契約を結ぶようにすればいいのです。

 

定期借家での契約をある時期から基本型にしてしまえば、普通借家から定期借家への契約形態の切り替えをごく自然に進めていくことができるはずです。

 

できるだけ早い段階から、戦略的に手を打っておく。それが、不動産の抱えるマイナス要素を解消し、高値での売却を実現するための鉄則の一つです。