相続が重なり所有者が増えていく不動産は早めに現金で分けたほうがいいのか?
土地・建物として一つではあるものの所有者は何人もいるという不動産は、いま紹介した共同ビルに限りません。
土地単体にしてもビルにしても、最初の所有者は一人でも、相続を重ねると、それが何人にも増えていく可能性があります。相続は1回で終わりませんから、同じ不動産を代々持ち続ける限り、二次相続、三次相続、と相続回数を重ね、そのたびに所有者が増えていくことが考えられます。
しかもその場合、所有権の形態は共有です。先ほども少し説明したように、それを売却処分する場合には、ほかの共有者全員の同意が求められます。
つまり、複数人で共有する不動産とは運命共同体のようなものなのです。共有者の間で足並みがそろっていればいいのですが、それが乱れると、共同ビルの例で見たように共有者にとって決して得とは言えない事態が待ち受けています。
相続を重ねた不動産で考えられるのは、共有者に名を連ねる誰かが、この不動産を担保に借金をした挙げ句、それを返せずにこの不動産の持ち分が差し押さえられるという事態です。
差し押さえられたということは、この持ち分が不動産競売で落札される可能性があるということです。そうなると、どこの誰が共有者として名を連ねるようになるか、分かりません。
共有者の誰かが落札して所有者の範囲をむやみに広げない手もありますが、実際に落札できる保証はありません。
そうかといって、早くに処分してしまおうと不動産全体を売りに出したところで、事情が事情ですから、足元を見られて安く買い叩かれてしまうのがオチです。
問題が起きてからでは、どうにも対処のしようがなさそうです。所有者の範囲がむやみに広がるのを避けるなら、不動産を相続後に売却処分した上で、その代金である現金を相続人で分けるのがいいでしょう。
時間的・精神的に余裕を持った売却処分であれば、足元を見られて安く買い叩かれることもないはずです。しかも、先々の相続で共有者がどこまで増えてしまうのかを気にかける必要もありません。
相続税対策を考えると、相続資産を評価額の抑えられる不動産に相続が発生する前に置き換えておこうとするのは、無理もないことです。
しかしいったん相続が発生してしまえば、相続資産や相続人の状況などを踏まえ、相続人の間で相続資産を分け合うことになります。
そのとき、不動産として代々持ち続けるより、早めに売却処分して現金化した上で、共有者間で分け合う方がいいものも出てくるに違いありません。
二次相続、三次相続、といたずらに相続人を増やすことになるようであれば、先々に禍根を残さないためにも、早めの売却処分をご検討ください。