不動産物語

不動産売却について詳しく解説

田舎不動産の売買契約について、実践的契約書の読み方





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本章では不動産売買時の契約書(宅建業法上は37条書面と呼ばれる)について説明します。基本的に、契約当事者間でやりとりする金銭ルールの枠組みはこの契約書を取り結んだ段階で大枠が決まってしまいます。

 

 

先の重要事項説明書は購入契約前の物件そのものの判断材料として有効でしたが、ここでの契約書の役割は事後的なトラブルが起きたときに両者の負担割合をどう処理するかという点にも力点がおかれます。後々発生しかねない金銭がらみのトラブルを避けるだけでなく、不利な契約をしてしまうのを避ける意味においても本章を参考にしてください。

 

事前概略

 

まずは、契約書の内容説明に入る前に案外知られていない、契約上の業界実体と事前ルールについて説明しましょう。

 

 

契約を交わす際には、細かな点を無視すれば、全ての売買の取り決めがここでなされますが、実際のところこの業界では契約上のルールそのものが幾分あやふやになっている部分がいくつかあります。

 

 

契約内容に関わる解釈の問題一つにしても、意外にもプロである業者側がルールを勘違いしているケースが多々あり、それによって購入者と業者がトラブルを起こすケースも少なくありません。

 

 

記載事項は宅建業法上明確に定められていますが、細かな取り決めの部分では相当あやふやなことがなされてしまっているのが現状なのです。

 

 

本来であれば、皆さんには契約書面の内容について一字一句読みこなし、理解し、事後的なトラブルの一切起きない売買契約を完結させて欲しいところなのですが、現実には素人がそこまでやるのは難しすぎます。

 

 

最低限、以下の点に注意していただければ大きなミスのない契約ができるはずですから参考にしてください。契約書の書式は様々ですが、内容はほぼ一緒です。

 

①氏名・売買金額

 

売買契約書に記載される事項として、まず皆さんが目にするのは、売買の当事者双方の氏名と売買金額です。いくら素人の人であってもここを確認しない人はいないと思われますが、売買契約書の通例として、記載金額自体が漢数字(1000が壱千、200が弐百、30が参拾といったように)で記載されているため、普段それを見慣れない方にとっては一応の注意が必要でしょう。

 

 

購入物件に対してかかる消費税は建物のみで、土地に対しては課税されません。さらに本来課税対象の建物も木造であれば、築15年を過ぎると課税対象から外れるので要チェックです。

 

 

②手付金の処理と契約解除の関係

 

手付は売買価格の10%が普通です。業者が売主の場合には業者側は代金の20%以上の手付金を受け取ってはならないことになっています。

 

 

もし、皆さんが何らかの事情で売買契約の後に契約を破棄したいと考えたなら、買い手側は支払った手付金を放棄することにより、売り手側は受け取った手付金の倍額を返すことによって契約解除できるというのがここでいう手付解約です。

 

 

ちょっと法律的な面を説明すると、不動産売買における手付の性質は常に解約手付になります。手付の種類には他に証約手付(これだと放棄・倍返しによる解除ができない)というものがありますが、証約手付として支払ってしまった場合にも相手の売主が業者であれば皆さんが支払った手付は自動的に解約手付とみなされるため、業者が仮にそれを主張しても皆さんは解約手付として手付放棄による解除ができます。

 

 

この解約手付による手付の(買い手からの)放棄・(売り手からの)倍返しという考え方は相手への迷惑料という考えに基づいています。さらに、解除の意思表示はいつまでできるか、ということが実務上一番多いトラブルです。

 

 

一つケースを紹介すると、契約後引渡し前の段階において「もう買い手のあなたが中間金を支払ってしまった以上、契約解除はできませんよ。

 

 

契約書の上でも履行の着手があったときには契約解除できないことになってます」などと業者にいわれたら、皆さんはどう答えられるでしょうか?

 

 

本来この状態であれば買い手側からは解約できる、というのが正解です。しかし、皆さんが関わった業者が、タチの悪い業者であったり、売買の法的な理解の足りない業者であれば、こうした間違いを強要してくることが十分ありえます。買い手側の手付解約が可能なのは「売り手側が履行に着手するまで」です。

 

 

相手側(業者あるあるいは個人売主)が履行に着手しない以上は、手付を放棄することで解約できるというのが本来的な売買の原則なのです。

 

 

買い手の皆さん自身が契約締結後に中間金を入れようといれまいと、相手の売主が仮登記に応じた、あるいは物件の引渡しを受けた等の履行の着手におよんでいない限りは基本的にこの原則に立ち返って契約解除が可能です。

 

 

最近のお客さんはドライというのか、割り切りがとてもよく、契約後でも他にちょっといい物件が出てくるとカンタンに契約解除をしてきます。

 

 

「私はこの物件に出会うまで、もう3回も手付解約してます」といったお客さんもおり、手付解約なんのその、といった感じですが、これもやりすぎるとトータルの支払額で見れば損を出している場合がほとんどですから皆さんとしてもホドホドにすべきです。

 

 

一般的には契約時に「もしかしたら解約するかもしれない・・・」という気持ちがあるようなら手付を低めに入れておくのが得策です。逆に「この物件はなんとしても買っておきたい!絶対欲しい!」と思うのであれば、上記の範囲内で手付をたくさん入れておくことです。売り手がもしその契約を解除したくなったとき、その手付金と同額を皆さんに倍返しなければなりませんから。

 

 

③瑕疵担保責任・危険負担物件

 

購入後、もし欠陥が見つかったときに、売主・買主がどう金銭的な処理をするのかという取り決めが、ここでいう瑕疵担保責任であり、契約後引渡しまでの間に火災や地震等の天災地変が起きたときの取り決めが、危険負担です。

 

 

瑕疵担保責任では買主が瑕疵(欠陥)の事実に気づいてから1年間、もしくは引渡しの日から2年間まで(どちらになるかは契約上記載される)は責任追及できると覚えておいてください。危険負担は物件の引渡しまでの期間は売主が負います。

 

 

(民法上は土地建物の特定物について買主が責任を負う事になっているのですが、それでは実情に合わないため、修正されているのが通常です)書面を見渡して、何か不備がありそうなら、契約書の末尾にでも特記事項として修理箇所・条件等詳細の取り決めをしておくといいでしょう。

 

④ローン条項

 

田舎の中小業者から購入しようという場合に確認しておきたいのがこのローン(特約)条項です。これはつまり、買い手側の金融機関に対するローンの申し込みがもし通らなかったときには契約は白紙にします、ということを明記した保護条項です。

 

 

本来であれば、このローン条項には借入先の金融機関名、金利、期間を明記すべきなのですが、その契約をどうしても反故にしたくないという強引な業者だと、この条項部分を「当社紹介ローン」等というような書き方にしてしまう場合があります。

 

 

仮にこうした書き方がなされてしまうと、最初に申し込んだ一社のローンが通らなかった場合にもローン条項の適用による契約の白紙撤回をすることが困難になってしまい、ローン条項自体が事実上意味をなさないものとなってしまいます。

 

 

極論すれば、「契約が流れないように、どこでもいいからローンを借りさせてしまえ」という業者側の乱暴な手段だといえましょう。

 

 

皆さんが「それでもいい、とにかくローンを組める状態にして欲しい」というのなら別ですが、それでも金融機関が融資承認を下ろさないということは、当然、何らかの問題(本人の返済能力に問題があるとみたか、物件そのものの担保価値に問題があるとみたか)を含んでいますからその辺はよく吟味されることです。

 

 

通常はローン条項が設定される際には、借り入れ金額・金利・借入先・返済期間を明記しますから確認してください。

 

 

⑤登記簿に記載された事項の確認

 

契約直前の登記簿謄本との照合で契約内容を確認できます。通常仲介業者であれば、事前に謄本のコピーぐらいは用意しますが、もしないのであれば、要求すべきです。

 

 

(個人的に郵送でとることもできます)表題部で物件の名称と所在地、地目と地積が、甲区で所有権(所有者)が、乙区で所有権以外の権利についての内容がわかります。

 

 

この乙区に仮に抵当権がついていればどのように抹消されるのか、賃借権・地上権がついていれば、いつ外れるのかを確認してください。

 

 

抵当権は一般的には前所有者の住宅ローンの抵当権(これは買い手からの取得資金で残金決済時に同時抹消されるのが普通)であり、こういったものは珍しくないのですが、場合によって売り手の個人的な事業借り入れによるものだったりといったケースもあるのでその点の確認は必要でしょう。

 

 

不動産の売買契約は最低1、2時間はかかります。時に、あまりの退屈さと専門用語の難解さから寝てしまうお客さんもいますから注意したいものです。

 

 

変な業者になると、売って不安な物件をいかに安心して売り渡すかという技術に重点を置いた手続き処理をしてきますから、不安な部分があったら契約書に追加記入させたり、覚書を書かせるといいでしょう。

 

 

契約書面内容そのものが一般の素人の人には理解日常見慣れない理解しづらいものですが、上述した点をクリアしておけば大方の事後的トラブルは防げます。