不動産物語

不動産売却について詳しく解説

【不動産売却の税金】離婚による財産分与事例

Q.私は夫婦で工場を営んでおりましたが、このたび地域の再開発に伴い、私と妻が共有している現在の工場を売却して、他の地域に新たに工場を買取る予定です。

 

購入する工場用地は500㎡ですが、私が3/5、妻が2/5の資金を捻出して購入するつもりです。売却に伴う税金をなるべく抑えたいので買換特例を適用するつもりですが、気をつける点はございますか。

 

A.平成24年の税制改正により、買換え資産については面積要件が設けられています。

 

共有で買換資産を取得した場合の面積の判定は、共有地の総面積に取得者の共有持分の割合を乗じて計算した面積により判定することになります。

 

【解説】

1、税制改正前の取扱い(9号買換え)税制改正前の事業用の買換えについては、買換資産について特に制限はありませんでした。

 

よって、国内にある土地等、建物、構築物、又は機械及び装置であれば適用を受けることができました。

 

2、税制改正後の取扱い前のQ21にある通り、買換資産が土地等の場合については①面積要件、②特定施設の敷地であることが要件となりました。

 

①の面積要件については、面積が300㎡以上である必要がありますが、共有で取得した場合には、共有地の総面積に取得者の共有持分の割合を乗じて計算した面積により判定することになります。

 

あなたと妻の場合、以下のように判定します。あなた:500㎡×3/5=300㎡≧300㎡∴適用あり妻:500㎡×2/5=200㎡<300㎡∴適用なしよって、買換資産を土地等にした場合、あなたは買換え特例の適用を受けることができますが、妻は買換え特例の適用を受けることができません。

【不動産売却の税金】譲渡担保についての事例

Q.知人が事業資金を融通してくれることになりましたが、私個人所有の工場の土地について、譲渡担保の登記をすることが条件といわれました。譲渡担保の登記をすると、当該土地が、私個人の名義からこの知人の名義となるようですが、譲渡の税金はかかりますか?また、借りた事業資金が返済できなくなった場合には、どうなるのでしょうか?

 

A.譲渡担保を目的として所有権の移転登記をしても、所得税は課税されません。但し、その後、借入金を返済できなくなったため、実質的に債権者のものとしたときには、その事実が生じたときに、譲渡があったものとして取り扱われることになります。従って、現時点では、譲渡の税金はかかりません。

 

【解説】

1、譲渡担保とは通常、不動産を担保として借入をする際は、抵当権や根抵当権の設定登記をします。

 

この抵当権の設定登記より更に強固に担保したいときに、登記上だけ土地の所有者を借主から貸主の名義に移してしまうことを譲渡担保といいます。

 

借主は、所有権が移転しても使用収益できるので、質問者の場合には、土地の名義が貸主に変わっても以前と同様に工場として使用し続けることができます。

 

2、譲渡担保の登記以前は、真実は譲渡担保であっても、売買を原因とする登記ができました。

 

改正不動産登記法により、原則、売買を原因とする登記はできなくなっています。

 

3、譲渡担保と課税譲渡担保で所有権を移転登記しても、所得税では、その実質は担保にすぎないということで、売買はなかったものとして課税されません。但し、以下の条件に該当しなければなりません。

 

(1)契約書において以下の全ての事項を明らかにしていること

 

①担保となっている資産を債務者が従来どおり使用収益すること

 

②通常支払うと認められる当該債務にかかる利子又はこれに相当する使用料の支払に関する定めがあること

 

(2)債務者と債権者が連署した申立書を税務署長に提出すること申立書には、その譲渡が債権担保のみを目的として形式的に行われたものである旨の内容を記載すること

 

4、譲渡担保について課税が発生する場合その後上記3、(1)の要件のいずれかを欠くことになったとき、又は借主が債務を弁済できなくなったため、その資産が実質的にも債権者のものとなったときには、これらの事実が生じたときに譲渡があったものとして取り扱われます。

 

5、買戻条件付譲渡及び再売買の予約担保の契約には、譲渡担保ではなく、買戻条件付譲渡や再売買の予約等の形式があります。これらの場合であっても、上記のような要件に合致しているものは、譲渡担保に該当するものとして、同じ取り扱いが適用されます。

離婚による財産分与の事例

Q.この度、長年連れ添った妻と協議離婚をすることになりました。一緒に暮らしていた自宅マンション(時価3,000万円)を慰謝料として妻に手渡すことで、協議が成立しました。

 

慰謝料として自宅を妻に渡す私、慰謝料として自宅を私からもらう妻に何か税金はかかるでしょうか?

 

A.離婚による財産分与を土地建物などで行ったときは、分与した人に、分与した土地建物について譲渡所得税の課税が発生します。

 

また離婚により財産をもらった場合は、通常、贈与税の課税は受けません。従って、マンションを渡す夫には譲渡所得税が課税されますが、マンションをもらう妻には贈与税は課税されません。

 

 

【解説】

1、離婚に基づく土地建物等による財産分与財産分与を現金で行った場合、課税は発生しません。しかし、土地建物のような不動産を財産分与すると、分与した人に譲渡所得税が発生します。

 

ご質問の場合であれば、夫が妻に時価3,000万円のマンションを財産分与したので、夫がまずマンションを3,000万円で売却し、その売却代金の3,000万円を妻に渡すことにより、妻への財産分与義務を履行したと税務はみなします。

 

マンションを直接妻への債務の弁済にあてたため、現金収入はなかったとしても、もし、譲渡所得の課税をしなかったら、資産を売却して現金で債務の弁済にあてた人とのバランスを欠くと考えているからです。

 

2、財産分与による譲渡所得税の計算土地建物を財産分与した場合には、分与したときの土地建物等の時価が譲渡収入金額となります。

 

従って土地建物の分与を受けた人は、分与を受けた日に、分与を受けた時の時価で土地建物を取得したこととなります。

 

3、居住用財産の譲渡に係る課税の特例分与した財産が夫婦の居住用土地建物である場合、一定の要件を満たしているときは、居住用財産の譲渡に係る課税の特例の適用を受けることができます。

 

居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例及び軽減税率の特例は、譲渡した相手が、配偶者、直系血族及びその他特別の関係がある人のときは、適用できないことになっています。

 

離婚に基づく土地建物等による財産分与も特殊関係者である配偶者に対しての譲渡として、特例の適用が受けられないと懸念されますが、

 

「居住用財産の譲渡者から婚姻に伴う財産分与、損害賠償その他これらに類するものとして受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者は、上記の特殊関係者に該当しないものとする。」

 

とされているため、離婚による財産分与の譲渡は、特殊関係者への譲渡に該当しないこととされているからです。

 

戸籍除籍前に譲渡をしたとしても、その後すぐに除籍をしている場合等、離婚による財産分与として認められるときは、適用を受けられると考えられています。

 

4、財産をもらった側の課税離婚により財産分与を受けた場合、通常、贈与税は課税されません。これは、離婚による財産分与の請求権を相手方に行使した結果取得したものであり、無償による財産の収受ではないと考えるからです。

 

ただし、以下のような場合には、贈与税が課税されます。

 

(1)分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。

 

(2)離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。

 

 

【不動産売却の税金】代償分割とは

Q.父に相続が発生しました。母は既に他界しており、相続人は私と妹です。父の財産は自宅の不動産(相続税評価額8,000万円)と保険金(3,000万円)です。

 

妹との遺産分割において、自宅は父と同居していた私が相続することで合意しました。

 

ただし、保険金の受取人も私であったため、妹は全く財産を相続できません。不動産を共有にしたくはないのですが、何かいい方法はありますか。

 

A.代償分割という方法があります。代償分割とは遺産分割の方法のひとつで、相続人の1人又は数人が相続財産を取得し、その相続財産を取得した人が他の相続人に対して代償金などを支払う方法です。

 

あなたの場合、自宅の不動産の全てと保険金を取得する見返りとして、妹に代償金を支払う方法が考えられます。

 

【解説】

1、不動産を共有で相続する場合遺産分割において、相続財産が不動産のみの場合は、その不動産を共有持分で相続することが考えられます。

 

ただし、兄弟で不動産を共有した場合、売却等の処分に関しても共有者の同意が必要になり、また、将来財産が細分化されていく可能性があります。仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を共有で相続した場合、ご自宅の建替えや買換えをされるときは、全て妹の同意が必要となります。

 

2、小規模宅地等の特例相続税の計算上、小規模宅地等の特例の適用に関しては、その不動産の取得者ごとに判定をするため、要件を満たさない相続人がその不動産を相続しても適用が受けられないことが考えられます。

 

また、同居している親族がご自宅を相続した場合、一定の要件を満たせば、240㎡まで80%の減額を受けることができます。

 

仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を1/2ずつ共有で相続し、一定の要件を満たした場合、あなたが相続する持分のみが80%減額の対象となり、妹が相続する持分については特例の適用がありません。

 

具体的には以下の計算となります。

 

①全てあなたが相続した場合の相続税評価額の計算8,000万円×(1−80%)=1,600万円

 

②あなたと妹が1/2ずつ共有で相続した場合の相続税評価額の計算あなたの持分:8,000万円×1/2×(1−80%)=800万円妹の持分:8,000万円×1/2=4,000万円合計:4,800万円

 

 

3、代償分割あなたがご自宅の不動産の全てを相続することで、将来の処分もご自身のみの判断で実行することができ、小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。

 

妹にはその見返りとして、保険金やご自身の現預金などから代償金を支払うことで円滑な遺産分割を進めることが可能です。留意点は以下の通りです。

 

①代償分割を予定している場合には、生命保険金などで代償金に見合う財産を生前に準備しておきます。

 

②相続により取得した不動産を売却してその代金を分割した場合、換価分割と考えられ、売却に関する所得税等の負担が発生する可能性があります。

 

③代償財産として交付する財産が、その交付する相続人の所有不動産の場合には、その交付したときにおける時価でその不動産を売却したことになり、所得税等が課税されます。

【不動産売却の税金】共有物の分割

Q.父の相続の際、駐車場となっている土地を私と弟と共有で1/2ずつ相続しました。私は売却をしたいのですが、弟は反対をしており、売却することができません。売却するために弟との共有を解消して単独所有にしたいのですが、どういった方法がありますか。

 

A.共有物の分割という方法があります。共有物の分割とは、個人が他の人と土地を共有している場合において、その共有地を持分に応じて分割することをいいます。あなたの場合、注意すべき点としては、分割後のあなたの土地の価額と弟の土地の価額を、おおむね等しい価額にする必要があります。

 

【解説】

1、共有物の分割共有地の持分を他の人に移転した場合、所得税又は贈与税がかかる可能性があります。

 

ただし、共有地についてその持分に応ずる分割があった場合で、分割後の土地の価額がおおむね等しいときは、その分割による課税関係は発生しません。

 

2、土地の価額分割後の土地の価額が等しくなるように土地の分割をします。例えば、以下のような分割が考えられます。

 

また、共有物の分割は、分割後の土地の価額の比が共有持分の割合とおおむね等しくなることが重要です。

 

仮に分割後の面積比が共有持分の割合と等しくなったとしても、土地の価額が異なるときは、税金がかからない共有物の分割に該当しませんので注意が必要です。

 

例えば、以下のような分割を検証します。上記の分割をした場合、分割後の面積が等しかったとしても、大通りに面した土地を取得した兄の土地の価額の方が高いことが想定されます。

 

面積を持分にあわせるのではなく、土地の価額を等しくさせることが重要です。3、具体的な手続など分割後の土地の価額を共有持分の割合にあわせる必要があるため、土地の価額を不動産鑑定士等の専門家に鑑定してもらった方が確実です。

【不動産売却の税金】代物弁済

Q.私は、友人から800万円を借りて事業を行っていましたが、このたび、全額返済するようせまられました。

 

手持ち資金がありませんので、10年前に父親から相続した土地(時価1,000万円、取得費は不明)を友人に渡し、借金を清算する予定です。この場合、私に何か税金がかかるのでしょうか。

 

A.代物弁済も資産の譲渡に含まれますので、あなたは消滅する債務の額を収入金額として、譲渡所得に対する税金がかかります。

 

また、友人は代物弁済によって取得する土地の時価と消滅する債権の額との差額に対して、贈与税がかかります。

 

【解説】

代物弁済とは、債務者が債権者の承諾を得て、金銭による弁済に代えて他の資産を引渡して、その債務を消滅させることをいいます。

 

代物弁済も所有する資産を相手に移転させる行為ですので、資産の譲渡があったものとして、譲渡所得に対する税金がかかります。なお、譲渡所得の収入金額は、原則として、消滅する債務の額となります。ご質問の場合、あなたの譲渡所得の収入金額は、消滅する債務の額800万円になります。

 

また、友人は、債権の額(800万円)を上回る土地(時価1,000万円)を取得することになりますので、取得する土地の価額と消滅する債権の額との差額200万円に対して、贈与税が課税されます。

 

なお、上記差額について、友人があなたに清算金200万円を支払う場合は、贈与税は課税されません。この場合、あなたの譲渡所得の収入金額は、消滅する債務の額800万円と清算金200万円の合計額となります。

 

あなたの譲渡所得に対する税金と友人の贈与税は、次のように計算します。

 

債務者(私):譲渡所得に対する税金

 

収入金額800万円−取得費40万円(800万円×5%:概算取得費)=長期譲渡所得760万円長期譲渡所得760万円×税率(15%+5%)=152万円※清算金200万円を取得する場合収入金額1,000万円(800万円+200万円)−取得費50万円(1,000万円×5%:概算取得費)=長期譲渡所得950万円長期譲渡所得950万円×税率(15%+5%)=190万円

 

 

債権者(友人):贈与税

 

(課税価格1,000万円−消滅する債権の額800万円−基礎控除110万円)×税率10%=9万円※清算金200万円を支払う場合代物弁済による経済的利益が発生しませんので、友人に贈与税は課税されません。

 

 

(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。本問の場合は・債務者(私)の税率が、(15%+0.315%+5%)となります。

 

 

【不動産売却の税金】負担付き贈与

Q.私は、15年前に銀行ローンで建築した賃貸アパート(時価2,000万円、帳簿価額1,000万円)を、息子に贈与しようと考えています。

 

ただ、残債が1,400万円残っていますので、全額息子に負担させる予定です。この場合、贈与を受ける息子だけでなく、贈与をする私にも何か税金がかかるのでしょうか。また、私が賃借人から預かっている敷金100万円はどのようになるのでしょうか。

 

A.負担付贈与に該当しますので、あなたには譲渡所得に対する税金が、息子さんには贈与税がかかります。また、賃借人から預かっている敷金は、債務として息子さんに引き継がれます。

 

【解説】

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に対して、贈与税が課税されます。

 

なお、贈与された財産が土地や家屋などの場合、贈与税の課税価格は、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によります。

 

また、資産の譲渡とは、有償無償を問わず、所有する資産を移転させる一切の行為をいいますので、通常の売買のほか、負担付贈与も資産の譲渡があったものとして課税されます。

 

この場合、譲渡所得の収入金額は、受贈者が負担する債務の額となります。なお、賃貸中の建物の所有権の移転があった場合に、賃借人から預かっている敷金は、建物の旧所有者であるあなたから新所有者である息子さんに引き継がれますので、建物の贈与後は息子さんの債務となります。

 

ご質問の場合、あなたの譲渡所得に対する税金と息子さんの贈与税は、次のように計算します。

 

 

贈与者(父):譲渡所得に対する税金

 

収入金額1,500万円(1,400万円+100万円)−取得費1,000万円=長期譲渡所得500万円長期譲渡所得500万円×税率(15%+5%)=100万円受贈者

 

 

(息子):贈与税(暦年課税の場合)

 

(課税価格2,000万円−負担額1,500万円−基礎控除額110万円)×税率20%−控除額25万円=53万円

 

 

(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。本問の場合は・贈与者(父)の税率が、(15%+0.315%+5%)となります。