不動産物語

不動産売却について詳しく解説

田舎地域独特の不動産取引形態





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田舎不動産での売買を経験してゆくと、通常の都市部の不動産取引売買とはまた違う田舎物件ならではの取引の形態に遭遇します。それが不動産業者とは違う個人ブローカーとの取引です。

 

 

田舎では地元住民で正式な免許・資格を持たない不動産屋まがいのブローカー的な人間というのも数多く存在し、彼らが契約を取りまとめるケースが往々にしてあります。

 

 

正式な不動産業者ではないけれども地元地域において売り手と買い手を取り結ぶ斡旋を免許を持たずにしている、といった存在だと考えてください。

 

 

話は少しずれますが、一般に不動産物件の売り手側には、自分の手持ちの不動産を売却・換金化しなければならない何らかの理由が存在します。

 

 

それらはたいてい返済に行き詰まった事業資金の工面等々といったマイナスの理由に基づくものがほとんどであるがため、不動産の売り手というのは自宅を売りに出している、ということをあまり周囲に公表しようとはしません。

 

 

田舎地域の場合、特にこの傾向が顕著であり、自分たちの先祖伝来の不動産を売るという事において羞恥心を拭い去れない面が強く残っています。

 

 

長くその地域に住んでいたにもかかわらず、自宅や手持ちの不動産を処分するということは周囲からみると「何かあったんじゃなかろうか?」とあらぬ疑問をもたれかねないため、売り手としても売却情報を積極的に開示できず、情報そのものが非常に閉鎖的になりがちなのです。

 

 

こうした公開情報として表には出てこない物件情報を握っているのが地元の個人ブローカーです。閉鎖的な農村地域では財産の保全管理に関しては、個人として財産管理するというよりも周辺地域に住むその家系の長に立つ人間やその地域の地元の有力者がまとめてそれらを管理する傾向が少なからず残っています。

 

 

そうした資産(不動産)の処分を任せられた人間は宅建業者としての正式な免許を持っているわけではないのですが、売却依頼された物件を仲介することで個人として紹介料を受け取ることになります。

 

 

かつてバブルで華やいでいたころは、一億総不動産屋等と呼ばれ、都心部を中心として個人の不動産ブローカーも数多く跋扈していましたが、ここでの個人ブローカーはそうした短期発生的なそれとは違い、長く地元に根付いた住民として個人財産の流通に関与している人間と見ることができます。

 

 

ただし、購入者側の皆さんとしては、こうした個人ブローカーとの取引の上では注意する必要が出てきます。こうした田舎地域の個人のブローカーは村内でも立場の強い(たいていはその地域の出身者であったりする)人間であったり、農業を生業としている側で副業としてそうした斡旋業をするようになった人間がほとんどです。

 

 

地元住民から自分たちの土地家屋の売却を任されたりと、ある意味ではそれだけ信用に足る取引相手と見ることもできるのですが、特に事務所を構えているわけでもなくそれを本業としてやっているわけでもないため、正規の不動産業者としての宅建業法の適用がありません。

 

 

そもそもが宅地建物取引業法というのは不動産業者が取引の素人であるはずの一般のお客さんを騙したり、被害を与えたりしないようにと、消費者保護の観点から厳しく業者を規制する意味で制定されたものなのですが、彼等のような無免許のブローカーにはこうしたルールがあてはまらないのです。

 

 

正式な業者としてではなく、個人行為としてなされる事なので宅建業法の規制を守る責任もなければ、罰則規定が適用されるわけでもありません。(ちなみに「業」としてなされているかどうかという判断は利益・報酬のあるなしとは関係ありません。

 

 

行為そのものが反復継続して不特定多数の相手を対象にしてなされているかどうかということにより判断されます。)つまり彼等のような業法の範囲外で活動している人間と取引をしても、それに伴う何か取引上のトラブルがあったとしても民法以外の法律を盾にして泣きつく事はできないということなのです。

 

 

それならばこうした個人のブローカーをはずして、売主と直接取引きすればいいではないか、と思われるはずです。ただ厄介なのは、こうした個人ブローカーは地域とまったく無関係ではなく、村内でも何らかの因果関係のある人間であるがため、方法としてブローカーをはずして当事者同士で勝手に契約をまとめてしまうといったことも地域ルールを無視した行動とみなされ、その後の人間関係がこじれる事もあるわけです。(この辺りが田舎不動産のややこしいところなのですが)情報ソースが彼らブローカーである以上、業者側も彼らの力を頼ることがあります。

 

 

時に地元の不動産業者ですら正確な内容を掴めないような「売り物件」の情報が流れる事もあり、「あそこにはあの人が住んでいたはずなのに、いつのまにか持ち主が変わっていた」というケースでは往々にしてこの地元の個人ブローカーが絡んできています。

 

 

広告や不動産業者から紹介を受ける際に記載されている売り出し価格の値段は必ずしも現実の成約価格(当事者間の売買契約価格)とはならない、ということは別の章でも説明しましたが、こうした不動産情報はその売り出し価格すらもない(売主が売買の情報を業者に流していないのですから当然ですが)売り情報としてその地域だけに流れることになります。

 

 

基本的にこうしたブローカーが絡む取引のケースでは窓口として正規の免許を持っている業者を通したほうがいいともいえます。手数料はもったいないですが、何かトラブルがあったときの賠償責任の面からも監督官庁の監視下にあるのとないのとでは取引上の安心感が違います。

 

 

ブローカーでも一般的には良識ある人間が多いようですが、必ずしも良心的な人間ばかりとは限りません。身元その他が確認でき、本当に信用できるのでなければ、素人の人がそうしたブローカーを直接相手にした取引をするのは避けたほうが無難です。